【死亡率約100%の猫の難病】猫伝染性腹膜炎 (FIP) の完全版!【獣医師解説】

こんにちは、獣医師もも (@juishi_momo) です。
この記事では、猫の難病:猫伝染性腹膜炎 (FIP) について解説しています。
FIPの症状や治療・治療費MUTIANについても分かりやすく解説していますのでゆっくりとご覧ください。

猫のFIPって?
FIPの症状・治療法・予防法について教えてください。

以上のような、猫伝染性腹膜炎 (FIP) についての質問にお答えします。

✔︎この記事の内容
・FIPってどんな病気?
・FIPになりやすい猫種
・FIPの予防法・治療法
・MUTIANとは

一つずつ丁寧に解説していきます。

目次

FIPってどんな病気?

FIPとは

猫伝染性腹膜炎 (Feline Infectious Peritonitis:FIP) は、猫のウイルス性の感染症です。
発症するとほぼ100%の猫が亡くなってしまう最も恐ろしい病気の一つです。

FIPに有効なワクチンは開発されておらず、広く普及した治療法も存在しません。

FIPは大きく分けて2つのタイプに分類されます。
一つはお腹や胸の中に体液が溜まってしまうウェットタイプ (滲出型)
もう一つは肝臓や腎臓などの臓器に肉芽腫というしこりができてしまうドライタイプ (非滲出型) です。
*2つのタイプの特徴を併せ持つ混合型も存在します。

FIPの原因ウイルス

FIPの原因ウイルスは、コロナウイルスの一種である猫伝染性腹膜炎ウイルスです。
*ヒトの新型コロナウイルス感染症とは関係ありません。同じコロナウイルス科に属します。

猫腸コロナウイルス (病原性は低く、感染しても症状は軽度の下痢程度)が、
猫の体内で猫伝染性腹膜炎ウイルス突然変異することでFIPに感染します

猫腸コロナウイルスが猫伝染性腹膜炎に突然変異する確率は10%以下程度です。
突然変異する原因は不明です。

FIPの症状

FIPの主な症状は以下の通りです。

・発熱
・食欲と元気がなくなる
・黄疸
・お腹周りが膨れる
・呼吸困難
・神経症状 (運動失調やけいれんなど)
・目を痛がる
・涙が多い

FIPは特徴的な症状を示さないため、獣医師でも症状からFIPを診断することはできません。
普段の生活から愛猫の様子をしっかり観察しましょう。

FIPになりやすい猫種

FIPは全ての猫で発症する可能性がありますが、
一部の純血種の猫でFIPの発生確率が高いことが報告されています。

FIPの発生確率が高い猫種は以下の通りです。

・アビシニアン
・ブリティッシュ・ショートヘアー
・ベンガル
・ラグドール
・ヒマラヤン
・レックス

上記の猫種を飼育されている方は注意が必要です。

FIPの予防法

猫腸コロナウイルスが根本的な原因

医療において最も重要なことは治療ではなく、病気にならない「予防」です。

FIPの原因ウイルスで説明したように、
FIPは猫の体内で猫腸コロナウイルスがFIPウイルスに突然変異することで発症します。

つまり、猫腸コロナウイルスの感染対策が重要なのです。

①多頭飼育をしない

多頭飼育は猫にとって非常に大きなストレス要因です。
多頭飼育環境では1匹が猫腸コロナウイルスに感染すると、一瞬のうちに他の猫に拡がります。
*コロナウイルスは感染力が高いウイルスです。

1家庭で最大3〜4匹程度が猫の飼育限界と言われています。
猫のためにも、多頭飼育は絶対にやめましょう。

②完全室内飼いを徹底する

世界中の獣医師で、猫の外飼いを推奨する人はいないと思います。
それほどまでに、猫の外飼いは危険です。

野良猫と接触することで、様々な病気 (猫エイズ、猫白血病、FIPなど)に感染する確率が高まります。

最近は猫に対し暴力を行う人も増えているので、絶対に愛猫は家から出さないでください

③混合ワクチンを接種する

猫白血病や猫エイズに感染している猫は免疫が抑制されるため、
猫腸コロナウイルスに感染する確率が高くなります。

また、免疫が抑制されると体内で猫腸コロナウイルスがFIPウイルスに突然変異する確率も上がります。

猫白血病は混合ワクチンの接種で予防できるので、
定期的に混合ワクチンを接種しましょう。

④ストレスを与えない

ストレスは猫の免疫力を低下させ、FIPの発症確率が高まります。

猫にストレスを与えないために、
キャットタワーを設置したり、おもちゃで遊んであげる、トイレを小まめに掃除すると良いでしょう。

特にトイレ環境は猫に大きな影響を与えます。
多頭飼育をされている方はトイレの数は猫の数+1以上用意し、常に清潔に保ちましょう。

FIPの治療法

FIPを発症した場合、国内で広く普及した治療法は存在しません。
そのため、症状に応じてステロイドを使ったり、体に溜まった体液を抜くなどの対症療法を行います。

近年アメリカの製薬会社からGS-441524という薬が発表されました。
この薬を用いると80%近い確率でFIPが治るというものです。
*現在、GS-441524は製剤化されておらず、正規の薬剤は入手不可能です。

今後、GS-445124が正式に販売されればFIPは治療可能な病気になるかもしれません。

MUTIAN (ムティアン) とは

先ほど説明したGS-441524の成分を模倣した未承認薬が中国の製薬会社から販売されています。
この薬がMUTIANです。

MUTIANは主に中国のブラックマーケットで流通しており、法外な値段で取引されています。
MUTIANを用いてFIPを治療すると、薬だけで約60〜80万円もかかります。

MUTIANの治療成績は非常に高く、GS-441524同様に約80%のFIP猫に有効とされています。

日本の獣医師もMUTIANの有効性は十分認識しておりますが、
MUTIANを使うということは違法取引に加担する可能性があるため
中々手が出せない心苦しい状況です。

一刻も早く、アメリカの製薬会社から正式なGS-441524が販売されることを願っています。

MUTIANは個人輸入できるため、飼い主様の自己責任で薬を使うことは可です。
また、数少ないですがMUTIANを用いた治療行う動物病院もあるため、
一度かかりつけ医に相談することをオススメします。

Facebookで「猫 FIP」と検索するといくつかの情報共有グループがヒットします。
参考までにリンクを紹介します。

猫伝染性腹膜炎 FIP CAT JAPAN
猫伝染性腹膜炎(FIP)の情報共有の会


この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ブログ村にも参加しています。
今回の記事が役に立ったという方は応援クリックよろしくお願いします。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次