【犬の最期の看取り】看取りの準備から火葬までの流れ【完全版】

犬の最期の看取り方
犬の最期の看取り

こんにちは、獣医師もも (@juishi_momo) です!

どんなに健康な犬でもだんだんと年を重ね、いつかはシニア期に突入します。

シニア期の後半では犬の「介護」が必要となり、やがて看取りを行なわなければなりません。

愛犬家の皆様には少し辛いお話かもしれませんが、事前に看取りについて想定しておくと

いざ看取りを行う時に気持ちの整理や段取りがスムーズに進むはずです。

・犬の看取りって何をするの・・・?

・犬の看取りってやっぱり辛いの・・・?

・犬が亡くなる直前のサインは・・・?

このような悩みや不安を抱えている飼い主様は非常に多いです。

看取りが穏やかに進むと飼い主様の心理的な負担も軽くなります。

そこでこの記事では、「犬の看取り」について、
現役獣医師である私が丁寧に解説していきます!

「愛犬が亡くなってしまった場合にするべきこと」は以下の記事で詳しく解説しています。

目次

犬の看取りとは

犬の看取りとは

まずは動物における「看取り」とは何か、
一緒に考えていきましょう。

「看取り」とは安らかな命の最期を見届けること

広辞苑で調べると、「看取り」とは単に病人のそばにいて世話をすることであり、

「安らかな命の最期を見届ける」という意味は含まれていないようです。

病人のそばにいて世話をすること。看病すること。看護

広辞苑

しかし、医療や獣医療の世界では、「看取り」とは安らかな命の最期を見届けるという意味で

よく使われます。

病気と闘う愛犬が安らかな最期を迎えられるように、家族全員で協力して命の最期を見届けること。
これが「看取り」という言葉です。

看取りは辛いのか

愛犬が亡くなる瞬間を見届けるというのは辛いものです。
しかし、しっかりと心の準備をしておくことで「後悔しない看取り」をすることはできます。

よく、「看取りの瞬間は辛いですか?」と飼い主様から聞かれます。

辛くない看取りは存在せず、必ず辛いタイミングが訪れます。

長い間一緒に暮らした小さな家族を失うことは辛いことであることに間違いありません。

しかし、事前に家族全員で相談して看取る場合のことを想定しておくことで、

後悔しない看取りをすることは可能です。

家族全員が納得し、後悔しない看取りを目指しましょう。

後悔しない犬の看取り方

後悔しない犬の看取り方

後悔しない看取りをするための方法をご紹介します。

あらかじめ家族で話し合っておくべきこと

・自宅で看取るか病院で看取るか
・延命治療を行うかどうか
・安楽死を希望するかどうか

闘病中、どこかのタイミングで主治医から余命の話があるかと思います。

一般的に余命1ヶ月〜2ヶ月のタイミングで
飼い主様にお伝えすることが多いです。

主治医から余命の話があれば、少しずつ看取りについて家族で話し合いましょう。

自宅で看取るか病院で看取るか

最後まで病院で入院しながら病気と戦うか、どこかのタイミングで自宅に戻り

自宅でできる治療を行いながら最期を迎えるのかしっかり話し合ってください。

どちらの選択肢にも正解・不正解はありません。

病院で看取るメリットは、最期まで獣医師による最適な治療を受けられること、
自宅で看取るメリットは、愛犬が慣れ親しんだ環境で最期を安らかに迎えられることです。

延命治療を行うかどうか

愛犬が危篤状態となって意識がなくなったり呼吸が止まった場合に、

延命治療をするか否かを事前に決めておくと、いざという時に迷うことがありません。

延命治療には、人工呼吸器を使った呼吸管理、点滴、強制給餌などがあります。

延命治療をしてまで愛犬が苦しむ時間を長引かせたくないという飼い主様もいれば、

離れて暮らしている家族が到着するまで延命してほしいという飼い主様もいらっしゃいます。

延命治療には高額な費用が発生することもあるため、
延命治療の必要性や費用について獣医師に確認しておきましょう。

安楽死を希望するかどうか

痙攣や呼吸困難が薬を使ってもコントロールできなくなった場合は、安楽死という選択肢も候補に挙がります。

安楽死は非常に重い決断となるため、必ず家族全員が納得した状態で行う必要があります。

日中は仕事をしていて看病できない場合

愛犬が介護を必要している一方で、飼い主様が日中は仕事に行かないといけないため

看病できないという相談をよく受けます。

ペットカメラが老犬の介護には必須です。
まだ設置していない方は必ず用意しておきましょう!

解決策としては、主に3つの方法があります。

①ペットシッターに日中の介護を依頼する
②在宅ワークに切り替える
③老犬ホームに預ける

ペットシッターに日中の介護を依頼する

最も現実的な解決法は、ペットシッターに日中の介護を依頼することです。

犬の大きさにもよりますが、1時間あたり3,000〜4,000円ほどで依頼できます。

>>ペットシッターの依頼はこちらから

在宅ワークに切り替える

中々仕事を休めない職場であれば、思い切って転職をするのも一つの手段です。

最近は多くの有名企業が在宅ワークを導入しており、給料アップも狙えるかもしれません。

老犬ホームに預ける

最後の手段としては、老犬ホームに預けるという方法もあります。

年間で60〜120万円が相場であるため経済的に許容できるか、

家族全員が納得できるかどうかしっかりと話し合いましょう。

痙攣や呼吸が苦しそうな場合

愛犬が痙攣していたり、呼吸が荒く苦しそうな場合は、

自宅で介護を続けていても愛犬を苦しめるだけです。

すぐに動物病院を受診して主治医と今後の方針を相談してください。

積極的な延命治療を行うのか、
緩和ケアや安楽死も視野に入る段階です。

老犬ホームという施設も増えている

どうしてもご自宅で老犬の世話をすることが難しい場合は、老犬ホームという選択肢もあります。

老犬ホームとは、様々な事情により老犬の世話が出来なくなってしまった飼い主様から、
老犬を預かり介護する施設です。

・基本的に老犬の世話を全て行ってくれる
・専属の獣医師の診察を必要な時に受けられる

・費用が非常に高額 (年間で60〜120万円が相場)
・まだまだ全国的なサービスではない (地方には存在しない)
・東京や大阪では入居待ちの施設が多い

「お住まいの地域 + 老犬ホーム」と検索すると簡単に調べることができます。

犬の緩和ケアについて

犬の緩和ケアについて

最近よく耳にする「緩和ケア」という言葉。
一緒に考えていきましょう。

犬の緩和ケアとは

緩和ケアは、治療不可能で生命を脅かす状態の犬を可能な限り快適にし、
その犬が一生の終わりに近づくにつれて生活の質(QOL : Quality Of Life)を向上させること
もしくは維持させることに重点を置いた獣医療です。

藤井動物病院のHPより引用

末期のがんや慢性腎不全などではこれ以上の治療が難しくなるため、

痛み吐き気などの不快な症状をできるだけ軽減して、QOLの向上を狙います。

緩和ケアの種類

・痛みのコントロール (最も大切!)
・点滴
・食べられるものや好きなものを食べさせる
・身体を綺麗にする

痛みのコントロール

痛みのコントロールは緩和ケアにおいて最重要事項です。

特に末期のがんは、痛み止めを使用しても痛みのコントロールができないことがあるため、

強力な麻薬を使って痛みを和らげることがあります。

QOLの向上に痛みの管理は欠かせません。

点滴

緩和ケアが必要な犬は、自力で水を飲むことが困難であることがほとんどです。

脱水はそのまま死に繋がる危険な状態であるため、

皮下点滴などを行って身体の渇きを取り除きます。

特に腎臓病の犬に点滴は欠かせません。

食べられるものや好きなものを食べさせる

これまでは獣医師による厳密な食事管理が行われてきたかと思いますが、

緩和ケアが必要な犬はほとんどのドッグフードを食べなくなります。

療法食は味が良くない上に、食欲もかなり落ちてきているからです。

基本的に、緩和ケアでは犬が食べられるものや好きなものを食べてもらいます。

大切なことはとにかく胃に何かを入れること!

ぶどうチョコレートカレーなどの犬に食べさせてはいけないものは

当然あげてはいけませんが、それ以外のものは何でもあげて大丈夫です。

*あくまでも私個人の意見であるため、主治医とよくご相談ください。

身体を綺麗にする

毎日のグルーミング、ブラッシングも非常に重要です。

闘病中の犬は、床ずれや免疫の低下で皮膚病になることがあります。

毎日のお手入れで身体を清潔にすることで、犬も快適な時間を過ごすことができます。

特に以下の部位を中心に綺麗にしてあげてください。

・顔まわり (特に眼、耳、口の周辺)
・脇や内股
・陰部やお尻周り

犬が亡くなる直前のサイン

犬が亡くなる前のサイン

犬が亡くなる直前にはいくつかのサインが見られます。
犬の飼い主様はぜひ覚えていてください。

老衰で亡くなる場合

食欲がなくなる

老衰により運動量が低下したり、消化管の働きが弱まることで食欲がなくなることがあります。

今までは大好きだったフードやおやつでも、老衰になるとほとんど食べなくなることがほとんどです。

食欲がなくなると皮下脂肪が減ってしまって、寝たきりの状態では床ずれができてしまいます。

愛犬がお気に入りの毛布やクッションを敷いてあげると
床ずれを防ぐことができます。

ボーッと遠くを見ているような目 (焦点が合わない)

老衰で亡くなる直前は意識が遠のいていくため、目の焦点が合わない印象を受けたり、

ボーッと遠くを見ているような目になることがあります。

意識が遠のいている状態でも、聴覚は最後まで残っています。
愛犬の名前を呼んであげたり声をかけ続けてあげてください。

おしっこやウンチが漏れる

亡くなる直前は膀胱や肛門を閉じている筋肉が緩んでしまうため、

おしっこやウンチが漏れてしまいます。

寝たきりの状態では、犬は自分で排泄をコントロールできないため

こまめにおしっこやウンチをしていないかチェックしてあげてください。

浅く速いあえぐような呼吸

動画のような、亡くなる直前に見られる呼吸を「死戦期呼吸」と呼びます。

下顎をパクパクと動かしたり、浅く速いあえぐような呼吸が見られた場合は、
数時間以内に亡くなる可能性が非常に高いです。

うなぎさんのYouTubeより動画引用

闘病中に亡くなる場合

病気のコントロールができなくなる

がんや心臓病などの闘病中に亡くなる場合は、病気のコントロールができなくなって

亡くなってしまうことが多いです。

長期間同じ薬を飲み続けると、薬に対して耐性ができてしまうため

病気のコントロールが難しくなります。

痙攣 (けいれん)する

脳腫瘍やがんなどの闘病中には、痙攣が多く見られます。

痙攣は体力を大きく消耗するため、痙攣の後に亡くなってしまうことが多いです。

意識を保てず呼びかけに反応できない

病気が進行すると意識を保てなくなるため、飼い主様の呼びかけにも全く反応しなくなります。

意識を保てなくなると数分〜1時間以内に亡くなることが多いです。

犬が亡くなったらどうすればいいの?

犬が亡くなったらするべきこと

犬が亡くなったらするべきことはたくさんあります。
焦らずに一つずつ確認していきましょう。

①死後硬直が始める前に手足を丸めるように内側に折る
②目が開いていたら閉じてあげる

③ご遺体を綺麗にしてあげる
④ドライアイス、保冷剤などでご遺体を冷やす
⑤葬儀・火葬業者を手配する
⑥30日以内に犬の「死亡届」を市役所に提出する

死後硬直が始める前に手足を丸めるように内側に折る

愛犬の呼吸が止まり心臓の拍動を感じなくなった場合は、残念ながら虹の橋へ渡ったということです。

死後硬直は1〜2時間ほどで始まるので、すぐに手足を丸めるように内側に折った姿勢にしてあげてください

この姿勢にすることで安置箱や棺に納めやすくなります。

目も開いていればそっと閉じてあげてください。

ご遺体を綺麗にしてあげる

亡くなる直前に口、鼻、肛門から体液が漏れ出る場合があります。

ドライシャンプーなどを使ってご遺体を綺麗にしてあげましょう。

毛並みもボサボサになっていることが多いので、ブラッシングをしてあげると

より綺麗に送り出すことができます。

ドライアイス、保冷剤などでご遺体を冷やす

次に、腐敗を防ぐためドライアイスや保冷剤などでご遺体を冷やすことが必要です。

<必要なもの>
・安置箱やペット用棺 (ダンボールでも代用可)
・ドライアイスや保冷剤
・大きめのバスタオル
・乾綿や脱脂綿
(あれば)

保冷剤はドライアイスよりも冷却力が弱いため、数時間に1度は交換する必要があります。
ドライアイスはスーパーなどで冷凍食品を買うと貰えます。

お腹側と背中側にドライアイスや保冷剤を置き、その上からバスタオルを被せてあげてください。

ご自宅に乾綿や脱脂綿があれば、鼻と肛門を防いであげると良いでしょう。

↓小型犬〜中型犬はこちら

↓大型犬はこちら

葬儀・火葬業者を手配する

次にペット葬儀社に葬儀・火葬の手配を行いましょう。

分譲一戸建ての場合は、敷地内にペットの遺体を埋葬しても法律的な
問題はありません
しかし、土に還るまでに数十年かかるため虫や異臭が発生します。
土葬するのは絶対にやめましょう。

ペットの火葬方法には大きく分けて、「合同火葬」と「個別火葬」があります。

合同火葬

合同火葬とは、火葬業者やペット霊園で火葬、供養を全てお任せするタイプです。

・費用が最も安い (15,000〜30,000円が相場)
・最短で当日の火葬・供養が可能

・返骨がない

合同火葬は忙しい方や、火葬にあまりお金をかけたくない方、他のペットたちと一緒に見送ってあげたい方に
最適です。

個別火葬

火葬業者が自宅を訪問し、自宅でお別れのセレモニーを行った後に、

愛犬のご遺体を単独で火葬・供養します。

・最後まで愛犬に付き添って供養することができる
・返骨がある
・サービスが丁寧

・費用がかなり高い (30,000〜80,000円が相場)
・予約が取れない場合がある

個別火葬は、時間に余裕があ人間同様に手厚く葬儀・供養をしてあげたい方におすすめです。

30日以内に犬の「死亡届」を市役所に提出する

忘れてはならないのが、犬の「死亡届」です。

愛犬が死亡した30日以内に、「犬の死亡届」に犬鑑札と狂犬病予防注射済票を添付して
提出してください。

この手続きを怠ると「狂犬病予防接種の案内」が毎年送られてきます。

死亡届を提出していないと、市役所は「犬が生きているのに狂犬病の予防接種をしていない」と判断します。

狂犬病の予防注射をしていないと見なされると、
20万円以下の罰金を請求されることがあるので注意してください。

犬の死亡届(PDF:104KB)

飼い犬が血統書団体に加入しているなら、血統書登録を抹消する手続きを行う必要もあります。
詳しくは血統書団体にご相談ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事の重要ポイントをまとめました。

・「看取り」とは安らかな命の最期を見届けること
・事前に家族全員で看取りについて相談しておくことで
 後悔しない看取りをすることができる
・緩和ケアではQOLの改善に重きを置く
・亡くなる直前のサインとして、食欲がなくなったり、
 呼吸の変化、おもらしなどがある
・犬が亡くなったら、30日以内に犬の「死亡届」を市役所に提出する

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この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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