こんにちは、獣医師もも (@juishi_momo) です!
皆様は「MUTIAN」や「FIP」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
猫を飼われている方は一度は耳にしたことがあるかもしれません。
致死率90%以上の猫の難病であるFIP (猫伝染性腹膜炎)の特効薬がMUTIANという薬ですが、
その評価は獣医師によって大きく分かれます。
・猫がFIPと診断されたが治療法が分からな
い・・・
・MUTIANの個人輸入を検討しているがやり
方が分からない・・・
・MUTIANの費用に不安がある
このような悩みを抱えている方は非常に多いです。
愛猫がFIPと診断されても費用を理由に諦めたくないですよね。
そこでこの記事では、猫の難病であるFIPの特効薬であると話題の「MUTIAN」について、現役獣医師である私が丁寧に解説していきます!
目次
MUTIANとは
MUTIANの効果
MUTIANは、致死率がほぼ100%に近いFIPに対して極めて有効とされています。
最近ではMUTIANの効果を調べた論文が少しずつ発表されており、
80〜90%の症例で症状の改善が認められています。
引用:Therapeutic Effects of Mutian® Xraphconn on 141 Client-Owned Cats with Feline Infectious Peritonitis Predicted by Total Bilirubin Levels – PMC
現在、MUTIANは「Xraphconn(ラプコン)」という
名前で流通しています。
もともと、FIPの特効薬として「GS-441524」という薬が開発されました。
MUTIANはこの薬を模倣して作られたため、特許を侵害していると言われています。
MUTIANを処方するということは、
「この特許侵害に加担してしまうことになる」と
考える獣医師もいるため、中々国内での承認が進みません。
MUTIANの価格
MUTIANの費用の目安は体重や症状の重さによって異なりますが、
おおよそ80万〜150万ほどです。
FIP治療に使われるその他の薬としては、「CFN」や「モルヌピラビル」というものがあります。
・CFNはMUTIANと製造方法や成分は同
じ。価格は100〜120万ほど。
・モルヌピラビルは元々は人の新型コロ
ナの薬です。
価格は30万ほどでかなり安いですが、
猫での安全性が確立されていません。
総合的に考えると、現状はMUTIANが一番優れています。
MUTIANの個人輸入の方法
結論から言うと、MUTIANの個人輸入はあまりオススメできません。
MUTIANは当然、医薬品であるためその使用には慎重な判断が必要です。
飼い主様の自己判断で投薬を行うのオススメできません・・・
獣医師と相談した結果、「病院に在庫がないから個人で買ってほしい」と言われた場合は、
通販サイトで個人輸入を行ってください。
個人輸入した薬が届いたら、そのまま動物病院に持参して、
獣医師に投薬スケジュールを決めてもらいましょう。
*繰り返しになりますが、MUTIANは日本で未承認
の薬です。
個人輸入をする場合は全て自己責任となる点は
理解しておきましょう。
MUTIANはなぜ承認されないのか
一般的に新薬の開発〜承認には、10年以上の時間がかかります。
MUTIANの元となっている「GS-441524」は海外(オーストラリア、イギリス)では
以前から使用されており、すでに1000頭近くの治療実績があります。
一方で、MUTIANはGS-441524を無許可でコピーした薬であり、
特許の関係で多くの議論を生んだため承認されることはないと考えられます。
正規品であるGS-441524を使って、
より安く治療できるようになることを祈っています!
MUTIANの協力病院一覧
MUTIANを病院の在庫として準備していて、
FIP治療をスムーズに行うことができる協力病院は以下の画像の通りです。
FIP治療を希望する場合は、事前に病院に電話をして
病院の指示に従ってください。
FIP (猫伝染性腹膜炎)とは
次はFIP (猫伝染性腹膜炎)について学んでいきましょう!
FIPをより詳しく知りたい方は以下の記事を是非読んでみてください!
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FIPについて勉強したい方やFIPと戦う飼い主様に向けて、FIPを分かりやすく解説します。
FIPの症状
FIPは症状や病理学的特徴から「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」、
もしくはその両方の「混合タイプ」に分類されます。
ウェットタイプは、腹部や胸部に水分が溜まり呼吸困難を引き起こします。
ドライタイプは、水分が溜まることはありませんが、眼や神経の症状が強く現れます。
共通の症状としては、食欲不振、発熱、体重減少、黄疸、および下痢、嘔吐などが見られます。
FIPの厄介なところはFIP特有の症状がないため、
FIPを疑うことが難しいところです。
FIPの余命と生存率
余命
MUTIANなどの治療薬を使わずに経過観察を行うと、
ウェットタイプで約2~4週間程度、ドライタイプでは3~6か月程度の余命と言われています。
ウェットタイプは体内に水が溜まって呼吸困難となるため、
余命が短い傾向にあります。
生存率
MUTIANを使った場合の生存率は80〜90%程度、
治療を行わなかった場合は生存率は0%に近いです。
GS-441524やMUTIANが登場する前は、FIPになるとただ死を待つだけでしたが
新薬の登場でFIPは治る病気となりました。
FIP治療の費用
MUTIANを使ってFIPを治療する場合、以下の費用が発生します。
・MUTIAN代:80万〜150万
・血液検査、エコー検査などの各種検査代:
10〜20万円
・投薬終了後の定期健診代:5万円程度
猫の体格やFIPの重症度によって大きく異なりますが、おおよそ120〜200万円程度の費用は覚悟しておきましょう。
FIPは完治するのか
結論から言うと、FIPは完治できる病気になりました。
MUTIANを正しく使って治療を行うと、FIPの生存率は80〜90%程度と言われています。
早期発見と正しい治療を行えばFIPは完治する可能性が高いので、
愛猫の様子に異変がないか普段からよく観察し、1年に1回は定期健診を受けることをオススメします!
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事の重要ポイントをまとめました。
・MUTIANはFIPの特効薬である
・MUTIANは正規品である「GS-
441524」の特許を侵害しているため
日本での使用は賛否両論がある
・MUTIANを使うと80〜90%の症例で
改善が認められる
・無治療であればFIPの余命は数週間〜
数ヶ月程度
・早期発見できればFIPは完治する可能
性がある
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