こんにちは、獣医師もも (@juishi_momo) です!
「獣医と医者ではどっちが難しいの?」「獣医と医者の年収の違いは?」
このようなテーマは昔からよく議論されており、受験難易度については人によって意見も様々です。
中学生や高校生の方で、獣医と医者のどちらになるか迷っている方も多いのではないでしょうか?
一見似たような職業である獣医と医者ですが、
仕事内容や受験難易度、平均年収などは大きく異なります。
そこでこの記事では、「獣医と医者のどっちが難しいか」「獣医と医者の年収の違い」などについて、
現役獣医師ある私が丁寧に解説していきます!
平均すると受験難易度は医学部の方がやや高め
まず始めに医学部と獣医学部の受験難易度の違いを見ていきましょう。
結論からお伝えすると、医学部の方が受験難易度はやや高めです。
医学部と獣医学部、それぞれの入試難易度が上位の大学は以下の通りです。
医学部 | 獣医学部 |
【91%】東京大学 (75) | 【87%】東京大学 (70) |
【89%】京都大学 (72.5) | 【87%】北海道大学 (67.5) |
【88%】東京医科歯科大(70)、大阪大学(70) | 【85%】東京農工大学 (65) |
【86%】千葉大(67.5)、横浜市立大(67.5)、 名古屋大学(67.5)、九州大学(67.5) 大阪公立大(65) | 【80%】宮崎大学 (62.5)、鹿児島大学 (62.5) 山口大学 (62.5) |
【85%】大阪公立大学(65) | 【77%】大阪公立大学 (60)、 帯広畜産大学 (60) |
【84%】北大(65)、東北大(67.5)、奈良県立歯科大(65) | 【74%】鳥取大学 (60)、岩手大学 (60) |
【】内は共通テストのボーダー得点率、カッコ内の数字は偏差値
医学部、獣医学部ともに難易度が最も高い大学は東京大学ですが、
東京大学医学部の偏差値は75、東京大学獣医学部の偏差値は70と5ポイントの差があります。
国立獣医学部の定員数は30〜40人ほどですが、国立医学部の定員数は80〜100人ほどです。
定員数が大きく異なるため一概に難易度の比較はできませんが、
偏差値だけを見ると医学部の方が受験難易度は高いと言えます。
医者と獣医の年収の違い
次に、皆さんの気になる獣医と医者の平均年収の違いを
見ていきましょう!
医者の平均年収は1,378万円
厚生労働省が公開した令和3年賃金構造基本統計調査によると、医師全体の平均年収は約1,378.2万円です。
また、医師の平均年収を男女別にみると、以下の表の通りです。
平均年齢 | 平均勤続年数 | 所定内実労働時間数 | 超過実労働時間数 (残業時間) | 月の給料 | 年間のボーナス | 平均年収 | |
男性 | 46.8歳 | 8.0年 | 164時間 | 16時間 | 111万8,100円 | 128万2,200円 | 1,469万9,400円 |
女性 | 39.9歳 | 6.4年 | 161時間 | 13時間 | 81万600円 | 80万9,900円 | 1,053万7,100円 |
男女計 | 45.3歳 | 7.7年 | 163時間 | 15時間 | 105万400円 | 117万8,100円 | 1,378万2,900円 |
男性と女性では、平均勤続年数や労働時間、残業時間などに大きな差はありませんが、
平均年収は、男性:1,469万9,400円、女性:1,053万7,100円と400万円以上の差があります。
一般的に医者の世界では、診療科でも平均年収は大きく異なります。
獣医の平均年収は687万円
厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、
獣医師の平均年収は37.8歳で約687万円となっています。
平均年収 | 687万円 |
月の給料 | 49万円 |
ボーナスの総額 | 93万円 |
平均年齢 | 37.8歳 |
実は獣医の平均年収は医者のちょうど半分なんです!
獣医も医師と同じ専門職であり、医学部と同じ6年制の大学に通う必要があります。
さらに、卒業に加えて難易度の高い国家試験に合格しなければなりません。
獣医の年収はなぜ低いのか
治療する対象が違うと言えど、獣医と医師は同じ医療職です。
どうして獣医の年収はここまで低いのでしょうか?
結論からお伝えすると、以下の3つの理由が挙げられます。
・動物病院の数が増えすぎている
・ペットの数が減少している
・人と動物の保険制度の違い
動物病院の数が増えすぎている
一つ目は、動物病院の数が増えすぎていることです。
以下のグラフをご覧ください。
青色の棒グラフが全国の動物病院の数を表し、黄色の折れ線グラフは動物病院の増えた数を表しています。
青色の棒グラフは2005年から現在にかけて緩やかな右肩上がりとなっていて、
年々動物病院の数が増えていることが分かります。
ペットの数が減少している
二つ目の理由は、ペットの数が減少していることです。
獣医は動物の病気を治療してお金を頂くことが多いため、
ペットの数が減少すると当然売り上げは低くなってしまいます。
・少子高齢化でペットの世話をする人が減少した
・近年の物価高騰で飼育費用が増加
少子高齢化や物価高騰が原因で「動物離れ」が加速している日本。
特に犬の飼育頭数は急激に減少していて、動物病院の経営に大きなダメージを与えています。
人と動物の保険制度の違い
三つ目は、人と動物の保険制度の違いです。
日本の人医療では、国民皆保険制度があるため全ての人が公的医療保険に加入し、
全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減しています。
一方で、獣医療の世界に国民皆保険制度は存在しないため、
飼い主様の判断で民間のペット保険に加入するか、そもそも保険に入らないか選択します。
高額な治療費は払えない飼い主様が多くいるため、
動物病院は安い治療費でやりくりしなければなりません。
例えば、人の医療機関で10万円請求されたとします。
実際にあなたが支払っているのは治療費の30%であるため、
実質、医療機関には33万円のお金が入っています。(残りは健康保険料から支払われる)
動物病院で10万円請求された場合は、動物病院に入るお金はそのまま10万円です。
獣医学部と医学部の違い
次に獣医学部と医学部の違いを見ていきましょう!
獣医学部と医学部の理念
獣医学部の理念として、北海道大学の例を紹介します。
獣医学部では、本学の4つの基礎理念(フロンティア精神、国際性の涵養、全人教育、実学の重視)の下、多様な獣医学の社会的使命を理解し、高い動物生命倫理観、科学的な思考力と判断力および国際的な視野を備えた、創造性と人間性豊かな獣医師となる人材を育成することを教育目標としています。
北海道大学獣医学部より引用
次に、医学部の理念として、大阪大学医学部の理念を紹介します。
大阪大学医学部より引用
- 患者本位の安心・安全な全人的医療の提供
- 高度な医療の実践と未来医療の開発
- 社会・地域医療への貢献
- 豊かな人間性を持った優れた医療人の育成
大学入試の違い
医学部と獣医学部の共通試験で必要な科目に差はありませんが、
二次試験には大きな差があります。
医学部の二次試験では英語・数学・理科2科目に加えて、面接・小論文などが課されます。
一方で獣医学部の二次試験では、英語・理科1科目・数学 (数Ⅲなし)で受けられる大学が多いです。
*東大や北大を除く
獣医学部では面接や小論文が課されることは少ないです。
カリキュラムの違い
医学部は6年間を通して、みっちり医学や薬学、公衆衛生などを深く学びます。
一方で獣医学部は、基本的に人以外の動物全てが治療対象であるため、
牛、馬、豚、犬、猫、鶏などの治療法や、環境保全、生態系など幅広いことを学びます。
高校生の頃から「人を絶対に治したい!」と決まっている方は医学部に、
「生命医学に関する幅広い知識を学びたい!」という方には獣医学部がオススメです。
大学卒業後のキャリアの違い
医学部卒業後のキャリア
医学部を卒業して医師になった後は、9割以上の方が臨床の道に進みます。
まずは2年間の初期臨床研修として幅広い科を勉強し、
その後の3〜6年間の後期臨床研修を経て専門医の取得を目指します。
獣医学部卒業後のキャリア
一歩で、獣医学部を卒業して獣医師になった後は、幅広い選択肢があります。
「動物のお医者さん」のように小動物の臨床獣医師に進む割合は4割程度です。
獣医学部と医学部の受験はなぜ難しいのか
理系学部の最難関である医学部と、次に難しい獣医学部。
これら2つの学部はどうして受験難易度が高いのでしょうか?
一緒に考えていきましょう!
結論から言うと、獣医学部と医学部の受験が難しい理由は
以下の4つの理由が考えられます。
・受験生からの人気が高いため
・受験者に浪人生が多いため
・面接や小論文が課されるため
・仕事の責任が非常に重いため
受験生からの人気が高いため
医学部はその年収の高さ、獣医学部は動物と関わる職業であるため、
受験生からの人気が非常に高い学部です。
少子高齢化でほとんどの学部の志望者数が減少する一方で、
医学部と獣医学部を志望する学生数は年々増加しています。
受験生からの人気が高い学部であるほど、限られた合格枠に受験生が押し寄せるため
偏差値が高くなってしまいます。
受験者に浪人生が多いため
医学部や獣医学部は偏差値が高く、一回の受験で合格できない学生が多いため
受験生に浪人生が非常に多いです。
さらに、一度大学を卒業して社会人を経験した後に
医学部や獣医学部を志望する「再受験者」が多いことも大きな特徴です。
現役生よりも受験を知り尽くしている浪人生や再受験者と戦わないといけないため、
医学部・獣医学部受験の難易度は高いのです。
面接や小論文が課されるため
全ての医学部と一部の獣医学部では、筆記試験に加えて面接や小論文が課されます。
暗記や決まった解法が通用しない面接や小論文では、
受験生自身の価値観や考えがダイレクトに試されるため、対策が困難です。
仕事の責任が非常に重いため
医学部や獣医学部を卒業して医師や獣医師として働き出すと、
実際に患者を治療し命を助ける必要があります。
特に医師の責任は非常に重く、一つのミスが人の命を左右します。
このような重圧に耐えて、医師や獣医師として活躍できるかどうかを試す
最初の試練が入学試験であるため、難易度が非常に高いのです。
獣医と医者のダブルライセンスは可能か
ごく稀に、獣医師免許と医師免許の両方を持つ方がいらっしゃいます。
いわゆる「ダブルライセンス」ですが、詳しく解説します♪
ダブルライセンスには基本的に12年かかる
まず始めに、獣医師免許や医師免許は国家試験に合格すれば取得できるわけではありません。
国が認める大学を正規の過程で6年間勉強して、その上で国家試験に合格すれば
獣医師免許や医師免許をゲットできます。
つまり、どんなに優秀な人でも獣医師 or 医師免許を取得するためには、最低でも6年かかります。
獣医師免許と医師免許の両方を取得する「ダブルライセンス」になるには、
一旦、獣医学部か医学部を卒業してどちらかの免許を取得した後に、もう一度大学に入り直す必要があります。
*一部の大学では、再入学時に二年次や三年次から入学でき、その場合は12年よりも短くなります、
ダブルライセンスは国内でも数十人程度
医師と獣医師のダブルライセンスの数は正式に発表されていませんが、
おおよそ数十人程度と予想されています。
新型コロナウイルス感染症の拡大が好例ですが、近年は交通網の発達などで
他の地域の感染症が爆発的に世界中に広がるケースが増えています。
つまり、地球規模で人類や動物の安全を守るためには、
人医療と獣医療の両方の知識を持つことが必要となります。
今後、ダブルライセンスの重要性が増していくことは間違いありません。
獣医学部の難関大学は?
全国に17校しかない獣医学部を学べる大学の中で
難関と言われている大学を3つご紹介します!
第1位:東京大学
日本の獣医学を専攻できる大学で、最も入学難易度が高いのが東京大学です。
東京大学獣医学部の大きな特徴は、臨床よりも研究に特化している点です。
東京大学獣医学部の特徴は、臨床よりも研究に特化している点です。
東京大学の研究予算は日本中の全大学の中でもダントツで高く、
東大獣医学部は感染症やウイルス研究、最新の医療技術の研究などが大きな強みです。
卒業生の多くが、臨床獣医師ではなく、研究者や官僚になるのも有名な話ですね。
第2位:北海道大学
獣医学生の生活を丁寧かつ面白く描いた不朽の名作である「動物のお医者さん」の
モデルとなった大学が北海道大学です。
この漫画の影響で獣医学部ブームに火がつき、
北大獣医を志望する学生が爆発的に増えました。
北海道大学獣医学部の特徴は、その恵まれた自然環境を活かして座学よりも実習に力を入れている点です。
2週間の知床実習や1ヶ月間の牧場での実習など、とにかくフィールドワークが多いです。
北海道大学獣医学部の強みはなんと言っても、人獣共通感染症の研究です。
人獣共通感染症とは、エボラや鳥インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など
動物から人、人から動物と双方向から感染する病気のことです。
私も北海道大学獣医学部出身であり、
非常に有意義な6年間を送ることができました♪
第3位:東京農工大学
東京の府中にキャンパスを構える東京農工大学は、獣医学部が看板学部となっています。
東京農工大学は、臨床と研究の両方にバランスよく注力していて、学生の教育にも力を入れている大学です。
都心という恵まれた環境で6年間を過ごせるのも嬉しいポイントです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事の重要ポイントをまとめました。
以下の記事では、獣医師国家試験の合格率や獣医師の年収、仕事内容などを紹介しているので、
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この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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